コーヒーイノベーションが支える環境再生型農業: ブルーボトルの気候変動対策における次の一歩

ブルーボトルは、サステナビリティを行動で示すことを重視してきました。そして本日、ブルーボトルの炭素削減の歩みにおける次のステップとして、コーヒー生産におけるイノベーションの推進と並行して、環境再生型農業(リジェネラティブ農業)へ移行を進める生産者の支援により一層注力強化することをお知らせします。

私たちは温室効果ガス排出量を2018年比で18%削減 し、削減できない温室効果ガス排出量については高品質なカーボンクレジット で相殺することで、2024年までの実現を掲げていたカーボンニュートラル目標を達成することができました。この経験を経て、私たちは今、より本質的な変化を起こす強い決意を固めます。

「気候変動によってコーヒー生産の風景が大きく変わりつつある今、迅速な対応が求められると同時に、前向きな姿勢を持って取り組むことも欠かせません」と、ブルーボトルコーヒーCEOのカール・ストローヴィンクは語ります。

状況は深刻です。気候変動予測によると、2020年時点でコーヒー栽培に適していた土地の多くが、2050年までに失われる 可能性があります。しかし、コーヒーには大きな可能性も秘められています。多年生作物であるコーヒーは、アグロフォレストリー(森林農法)と相性が良く、排出される以上の炭素を隔離する力を持っています。さらに、生物多様性の促進、地下水の回復、土壌の健全性向上にも貢献できるのです。

「ブルーボトルでは、コーヒーが持つ可能性を最大限に発揮できるよう、バリューチェーンの内外にいるさまざまなパートナーと連携し、機会をともに探っています」とストローヴィンクは続けます。「私たちの関心は、気候変動の影響を回避することだけにとどまりません。コーヒー生産を、地域に活力をもたらし、コミュニティに貢献し、イノベーションを生み出すシステムとして捉え直そうとしているのです。そこからこそ、本当においしいコーヒー体験が生まれると信じています。」

関係性に根差した環境再生型農業

このビジョンを実現するために、ブルーボトルはコンサルタントおよび主要なサプライヤー4社とパートナーシップを結びました。これらのサプライヤーは、ブルーボトルのコーヒー供給量の3分の1以上を占めており、グリーンコーヒーの排出量の半分以上を排出している産地でもあります。それぞれの地域が抱えるニーズと可能性に合わせて、複数年にわたる移行戦略を共に策定しており、2026年には、ひとつの生産者グループとのパイロットプロジェクトから開始する予定です。

この戦略は、3つの結果を目標としています:

  1. 温室効果ガスの排出削減および大気中からの除去

  2. コーヒー生産の持続可能性を高める、土壌の健全性の向上

  3. 生産者の生活向上と、農園で働く人々への適正な賃金の実現に向けた道筋の構築

私たちは、次の世代にとってコーヒー農業が持続可能で希望ある選択肢となる未来を信じています。

サステナビリティ戦略を前進させる

環境再生型農業への移行と、アラビカ種以外の新栽培品種および新種の商業化を並行して支援することが、ブルーボトルのサステナビリティ戦略(英文記事)の3つの柱「持続可能な材料調達」「コミュニティへの配慮」「廃棄物と温室効果ガス排出の削減」をそれぞれ前進させます。

ブルーボトルが持続可能な材料調達において特に重視しているのは、コーヒーの未来に対してより安定した見通しをもたらすことです。
私たちは、World Coffee Research(英文記事) をはじめとする業界の取り組みを支援しています。これらの活動は、気候変動に適応できる高性能なコーヒー品種の開発を通じて、生産者の力になることを目指しています。

そして、グリーンコーヒー調達にまつわるサステナビリティリスクの監査を第三者機関に委任する、責任ある調達のプログラム(英文記事)を自社のバリューチェーン内で開始しました。 監査結果から得られた知見は生産者と共有し、重要なリスクには、農家支援プロジェクトへの的確な投資を通じて対応しています。

生産者とともに再生型農業への移行計画をつくり上げていくことは、環境への負荷を減らすだけでなく、気候変動や地域社会が直面する課題にしなやかに対応できる基盤づくりにもつながります。
農園での実践の変化を、インフラ整備など産地全体に関わる取り組みと結びつけて進めることで、ブルーボトルが掲げるサステナビリティ戦略の柱の一つである「コミュニティへの配慮」を形にしています。

また、アラビカ種にとどまらず、新たな品種や種の商業化を進めることにも力を注いでおり、これはコーヒーの遺伝的多様性を守り、将来的な供給リスクに備えることにもつながっています。

サステナビリティ戦略の三本柱のうち「廃棄物と排出の削減」に関して、環境再生型農業は本来、自然が持つ回復力を活かしながら、温室効果ガスの多い製品や手法への依存を減らすことを目指すアプローチです。具体的には、被覆作物(カバークロップ)の活用、堆肥の施用、土壌侵食の抑制といった土壌への負荷を抑える手法や、多様なシェードツリーの植樹や混植による生態系に配慮したコーヒー栽培によって、土壌の健康を高め、炭素の隔離(カーボン・シークエストレーション)を促進する効果が期待されます。

こうした再生型農業の移行計画に排出削減の視点を組み込むことで、ブルーボトルがこれまで積み重ねてきた気候アクションをさらに発展させていきます。

気候変動対策のリーダーとして実績を築く

2024年にカーボンニュートラル達成を宣言するうえで、私たちはSBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative; SBTi)のスコープ に基づき、排出原単位もしくは販売商品1キログラム当たりのカーボンフットプリントを2018年のベースラインから18%削減することができました。

2021年に始動してから目標年までの三年のなかで、私たちは排出が多いカテゴリーそれぞれで狙いを絞って削減に取り組み、その結果を測定しました:

1. コーヒー豆の調達

ブルーボトルはグリーンコーヒー供給の排出集約度を20%低減しました。グリーンコーヒーはブルーボトルの温室効果ガス(GHG)排出量全体の約3分の1を占める、最大の排出要因です。その主な要因は、土地利用の変化(LUC)と農園での生産活動にあります。

カーボンニュートラル達成のロードマップを公開したとき、ブルーボトルは自社のコーヒー供給のなかで測定される森林伐採のリスクを2018年ベースラインよりも軽減するための取り組みを発表しました。責任ある調達のプログラムを実施し、私たちが掲げる気候変動対策目標を生産者たちと共有しました。中でも注目すべきは、最も排出量が多く排出集約度も高かった産地のひとつであるエチオピアのLUCにおいて、93%の原単位削減を達成したことです。これが、カテゴリー全体の削減を後押ししました。

ブルーボトルの温室効果ガスの最大の排出源としてグリーンコーヒーが単独で頂点に君臨し続ける現状は、より排出が少ない取り組み(なかでもアグロフォレストリーや、天然物資材の活用など)を発展させる農家たちの支援がいかに重要であるかを浮き彫りにしています。

2. 乳製品

カフェ運営における排出源として、乳製品は依然として大きな要因ではありますが、ブルーボトルではカフェ全体における乳製品由来の排出量の割合を16%削減することに成功しました。この成果は主に、2021年に米国で開始し、2022年に全店舗へ拡大されたオーツミルクの使用を基本とするプログラム (英文記事)をによるものです。このプログラムは2021年にアメリカで開始し、2022年にかけて実施地域を拡大させました。アメリカのカフェにおけるプラントベースミルクの使用量は、2018年時点では動物性ミルクの3分の1でした。それが2023年時点では、動物性ミルクの二倍の水準で安定するまでに至っています。この標準化プログラムがなければ、カフェ運営における排出量、特に乳製品由来の排出は、はるかに高くなっていたと考えられます。

アジア市場では動物性ミルクの使用を基本としつつ、アメリカでのプログラムの始動を機にプラントベースミルクの普及を試験的に進めています。2023年時点で、カフェでグローバルに使用されるミルクの大半はプラントベースミルクとなりました。

3. 電力

ブルーボトルは購入電力の排出集約度を66%低減することができました。2018年時点では、カフェオペレーションにおける最大の排出源は電力でした。ブルーボトル全体の温室効果ガス排出量においても電力が10%を占めていました。 

2024年には、分離型の再生可能エネルギー証書(Unbundled REC)の購入を通じてアメリカと中華圏の全オペレーションで再生可能電力を利用しました。これにより、ブルーボトルの電力消費による年間排出量は74%削減され、ベースラインからの削減を後押ししました。

日本では2024年も引き続き、カフェ4店舗と日本と香港で提供するコーヒー豆の焙煎を担う焙煎所で再生可能電力を使用しました。ブルーボトル ジャパンは、2021年に開始された政府の非化石証書制度による電力入札システムにいち早く参加し、再生可能電力の導入において社内でも先進的な役割を果たしています。

4. 諸経費

ブルーボトルは、いずれも基準年と目標年の両方で事業を行っていた米国と日本の両市場において、従業員一人あたりの通勤由来の排出量を8%削減しました 出張や通勤などを含む諸経費としての排出は、ブルーボトルの2018年時点の排出量全体で3番目に大きいカテゴリでした。

COVID-19パンデミック以降、米国オフィスではハイブリッド勤務やリモートワーク制度を導入し、排出量の多い車での通勤を大きく削減することができました。


5. 廃棄物

2024年、ブルーボトルは廃棄物の発生に伴う排出量を上回る排出回避を実現しました。これは、廃棄物をエネルギーや資源として回収・活用する処理インフラの整備によるものです。具体的には、アジアにおける廃棄物発電(Waste-to-Energy)システム、米国でのコンポスト化、そして全市場におけるリサイクルの取り組みが、ブランド全体の排出量を3%削減することに貢献しました。


炭素除去でで締めくくる取り組み

排出削減の取り組みを行った上で、それでも残った温室効果ガスについては、気候変動に対する自然ベースの解決策に焦点を当てた炭素除去プロジェクトへの支援を通じて、その影響を相殺しました。その一環として、業界で初めて公式に認証された農業由来のカーボンクレジットを継続的に購入するという、複数年にわたる取り組み(英文記事)を進めています。 ブルーボトルは、カバークロップ(被覆作物)などの再生型農業を導入し、土壌の健康改善に取り組む農家を支援しています。さらに、コーヒー生産国であるタンザニアでは、劣化した草地を回復させるプロジェクトにも参画しました。

What’s Next

環境再生型農業への移行を支援することは、コーヒー生産者との長期的な取り組みです。私たちは2026年、ペルー南部のひとつの生産者グループとのパイロットから環境再生型農業への移行をスタートし、スケール拡大に向けて、このグループ内だけでなく、調達ネットワーク全体、さらにはそれを越えて広がりを生むための投資・協業パートナーとの連携の輪を広げていきます。

再生型農業の生産モデル設計にあたっては、4つの異なる産地を選定し、それぞれの地域コミュニティのビジョンを明確にし、複数の関係者の意見を調整しながら、段階的な移行計画を策定するためのプロセスを確立しました。産地でのイノベーションの面では、引き続き、気候変動に適応した特性を持つコーヒー品種への生産者のアクセスを広げる業界の取り組みを支援していきます。さらに、アラビカ種以外の品種にもスペシャルティコーヒーにおける新しい価値の創出を後押ししていきます。

2023年に初めてロブスタ種のブレンドをリリースして以来、アラビカ以外の種に対するスペシャルティコーヒー業界の関心の高まりを追い風に、私たちも新たな領域の開拓を続けています。2025年には「Blue Bottle Studio」がアジアツアーを実施し、リベリカ、エクセルサ、ロブスタのみで構成された限定メニューを展開しています。

これからのコーヒーの未来は、気候リスクに対応する新たな考え方の導入にかかっています。私たちは、地域社会に資源が行き渡り、豊かな生態系が未来のニーズに適応していくような世界を思い描くところから始めたいと考えています。このようなビジョンを描きながら、ブルーボトルは生産者とともに自然と協働する新たなアプローチの実験を重ね、コーヒーとそれを支えるコミュニティのために持続可能な成果を生み出す革新的な方法の検証に取り組んでいきます。