INTERVIEW WITH NARUMI YASHIRO

都心から程近くにありながらも、海に面した開放的な空間や豊かな緑が広がる「豊洲ぐるりパーク内豊洲公園」に823日(金)にオープンした「ブルーボトルコーヒー 豊洲パークカフェ」。

「ボーダーレス」をコンセプトにした、開放感に満ちた居心地の良いカフェの空間に溶け込みながらも、フードやコーヒーに彩りを添えているのは「narumiyashiro」の陶器です。

今回のブログではカフェのために器を制作してくださった、陶芸作家のnarumiyashiro(ナルミヤシロ)さんに、今回の器やご自身についてなどお話を伺ったインタビューの様子をご紹介します。

 

ブルーボトルコーヒー 豊洲パークカフェ photo Takumi Ota

 Interview

 

陶芸に興味をもったきっかけは何ですか?

きっかけは、何かモノを作ってみたい、陶芸って面白そう、というシンプルな興味でした。陶芸体験に行ってみたのですが、やってみたらその土の感触がとても心地よくて、どんどん惹きつけられていきました。

陶芸って一見簡単そうに見えるのですが、自分のイメージ通りにかたちを作ったり、色や質感を表現することは実は難しい。

なかなか思い通りにならないところも陶芸の魅力だなと思うようになりました。

土に触れている時間そのものも好きです。指先の感覚に集中して、目の前の制作に没頭することは、自分自身の内面と向き合っている時間のような気がします。

 

作品を作る上で、特に大切にしていることや心掛けている点を教えてください。

まず、何よりも使いやすさを重視しています。シンプルで日常的に使いやすいものを作ることが基本ですね。その上で、デザインや色味の部分で、洗練された美しさを兼ね備えていたいと思っています。手仕事と工業製品との間で、うまくバランスを取れればいいなと考えて、制作を続けています。

 

陶芸作家をしている中で、印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

お客さんと話すことがとても楽しいです。展示会などでお客さんと直接お話しできる機会は本当にありがたいですね。リピートしてくださる方も多いので、実際にご自宅で毎日のように使ってくださっている様子や、盛りつけを楽しんでくださっている様子を聞くと、とても嬉しく、励みになります。展示会には性別や年齢、国籍を問わず、幅広い方々が足を運んでくださるのも印象的です。とくに「初めて作家もののうつわを買うんです」という方や、「今まで食器にあまり興味がなかったんだけど」という方が、楽しそうにうつわを選んでくださる姿を眺めるのは、とても心温まる瞬間ですね。器や伝統工芸に詳しくなくても、たまたま見つけて、なんとなく手に取ってみて、「これ素敵だな」と感じていただけたら嬉しいです。

 今回豊洲パークカフェ用にご制作いただいた器についておしえてください。

難しかったです!(笑)

豊洲という場所は、もともと友人が近くに住んでいることもあって、私にとって馴染みのあるエリアでした。豊洲の印象は、東京の中でも開けていて、緑が多く、空が広いことです。この空間にカフェができると聞いたとき、豊洲だからこそ感じることのできる非日常感を大切にしたいと思い、休日のお出かけで訪れる方や、仕事の合間にコーヒーブレイクを楽しむ方々をイメージしながら器の制作を進めました。

建物から新しくつくるという話を伺ってとてもわくわくしたのを覚えています。narumiyashiroの定番ラインであるマグやプレートをベースにしつつ、豊洲パークカフェで提供されるフードメニューに合わせて調整をしていきました。デザインのラフ画を見せていただいたときにレンガの色味が印象的だったので、ココットの赤茶色はそんな店内の雰囲気と調和するのではないかなと思いながら提案させていただきました。

特に大変だったのはマグ。容量をぴったり揃えてほしいという依頼は、良い課題を与えてもらったな〜という感覚でした。仕様が固まってから納期までの期間もなかなかタイトだったので苦労しましたが、カフェオープンの内覧会の際に、店内にマグが並んでいる姿やゲストの方がうつわと一緒にコーヒーやフードを楽しんでくれているのを見て、込み上げるものがありましたね。

手仕事のマグカップだとそこまでぴったり同じモノをつくることって重要視されていないと思うのですが、やはりそこはコーヒーの味のクオリティを保つこと、ゲストの皆さんに美味しいものを提供するということを最優先に。打ち合わせを重ねる中で、ブルーボトルの皆さんがドリンクやフードにこだわりを持って提供していることが伝わってきたので、私もブルーボトルのその空間をつくる一部であり、仲間なんだという気持ちで一点一点手を動かしていました。マグはとくに使う方の手にも口にも触れるもの。取っ手や飲み口は滑らかに、馴染むようにと工夫をしています。内覧会の際に、豊洲パークカフェの店長さんとお話ししたのですが「マグが飲みやすい!」と言ってくださったのが嬉しかったです!直接説明したわけではないのに、伝わってる〜というのが感動でした。ゲストの皆さんはもちろんなのですが、いちばんうつわに触れるのってまずはスタッフの皆さんなので。

 

普段の生活でコーヒーは召し上がりますか? 

毎朝豆を挽いてコーヒーを淹れるのがルーティンになっています。仕事前の気持ちを切り替えたいときやリラックスしたいときにも、コーヒーを飲むことが多いです。特に好きな味わいは、わかりやすく華やかですっきりとしたものです。ブルーボトルコーヒーで言うと、「スリー・アフリカズ」が特においしかったです。シングルオリジンのコーヒーも好きなので、コロンビアやルワンダのコーヒーなども家でよく飲みます。国や地域によって人々や製法の特徴があり、そういった背景を知れるのもコーヒーの興味深いところ。もっともっと勉強してみたいなと思っています。

  

お仕事の合間にリラックスやリフレッシュのためにしていることはありますか?

ペアリングを楽しむのが好きで、甘いものと一緒に楽しむのが特に好きなんです。コーヒーを片手に和菓子やドライフルーツ、羊羹など、甘いものでリラックスする時間を持つことが多いですね。また、外を歩くことも好きなので、ボトルにコーヒーを淹れてお散歩に出かけることもあります。時には山登りをしたり自然を感じたりして、スマホから離れて、緑の中で一度自分をリセットする感覚や、自然の匂いを感じることでリフレッシュしています。

 

作品を作る時のインスピレーションを、そのような時間の中で得ることもあるのでしょうか?

そうですね。たとえばカフェやレストランに行った時に「これくらいのサイズ感も使いやすいな」「こういったかたちのものがあるといいかも」とヒントを得ることも多いです。

また、自然の中に出かけたり、美術館を訪れたり、映画を見たり、本を読んだりする中で、見たもの、聞いたもの、感じたことからインスピレーションを得て、作品に落とし込んでいくこともあります。建物の外壁や、ふと目についた景色の色味や質感が印象に残って、制作に繋がっていくこともありますね。

アトリエにずっとこもっていると見るものが限られてしまうので、外に出たり人と会ったりすることも重要だと感じています。自分が「これ好きだな」と直感的に感じたものや、偶然見つけたものがきっかけになることも多いですね。そういった日常の中での発見が、作品作りに繋がっています。

 

今後挑戦したいことや夢はありますか?

単純に物質としてのうつわを作るだけではなく、それを使う時間の愛おしさや、自分の生活のなかに愛着のあるうつわがある、そういう暮らし方を選ぶ、ということ、それってなかなか楽しいことだよ、ということをもっと伝えていけたらと思っています。

年齢や背景に関係なく、たくさんの人たちに「ボーターレス」の楽しさや喜びを届けられるようにしたいです。

自分の生き方ってこれでいいんだっけ?とか、もっと自分の人生をよくしたいんだけどなぁ、と感じている人がいたら、日々のちょっとした選択から変えてみてほしい。

日常的に、何を選ぶか、何を食べるか、どこに行って誰と会って、何を語るのか、そういうことがその人自身を形作っていくと思います。うつわを通して、そのようなちょっとしたことが、自分の内側を潤す大切な要素なんだということを伝えていきたいと思っています。

現在人気をいただいて欠品してしまっている豊洲カフェで発売しているコーヒーマグも、年内に再び発売を再開できるように、鋭意制作中です。年末のホットコーヒーがおいしい季節にぴったりのアイテムとなりますので、自分へのご褒美やギフトとしてもぜひご利用いただきたいです!

 

About narumi yashiro

「使うたびに心潤う 美しい日用品」をコンセプトに、デザインは極力シンプルに、作為が入り込みすぎない自然な美しさを追求し、日本で古くから大切にされてきたような凛とした普遍的な美意識に寄り添ったものづくりをしたいと願いながら日々の制作を続けているブランドです。

一点一点丁寧に手作業で制作されたことで生まれる、手に持ったときの馴染みかたや、釉薬による色や質感の出かたが一つ一つ異なる、使うたびに心が潤うような美しいものを制作されています。

東京都内のアトリエを拠点に、2018年より陶芸作家として活動中。日常使いしやすい食器やインテリアアイテムなどをご制作され、展示会なども開催されています。

ボーダーレスに、多くの人により身近に日常の中で使っていただきたいという素敵な想いを持って活動されているnarumiさん。

忙しい毎日の中でも、自分の心が潤うような、ちょっと豊かな時間を過ごして自分を好きになれるような、そんなきっかけとなる陶器をぜひお手に取ってご体感ください。

 photo Takumi Ota

ブルーボトルコーヒー 豊洲パークカフェ

東京都江東区豊洲2-3-6豊洲公園内 ブルーボトルコーヒー 豊洲パークカフェ

営業時間:8:0019:00

店舗面積:294.81

席数:64席(店内:24 / 半屋外:40席 )

アクセス:東京メトロ有楽町線「豊洲駅」7番出口から徒歩3

ゆりかもめ「豊洲駅」1B出口から徒歩2