INTERVIEW:Lefts, 道田有妃さん - 20年後もそばにあるプロダクトを -

暑さも落ち着き、秋の訪れを少しずつ感じる京都で、10月1日(日)から12月11日(月)まで「Blue Bottle Studio - Kyoto -」が秋季営業を実施いたします。Blue Bottle Studio - Kyoto - は、ブランド創業者であるジェームス・フリーマンがこれまで出会ってきた数えきれないほどのコーヒーや人、心に響く体験を通して、改めてコーヒーと向かい合い、現在考える最高のコーヒー体験を表現する場所として、今年の3月にオープンしました。今回の秋季営業では、ファーストドリンクに「リーフ、フラワー、チェリー」の3種類のテイスティングフライトをご用意し、コーヒーの葉、花、果実と、コーヒーノキを余すことなくお楽しみいただけます。コースの中盤でご提供しているパートドフリュイも秋仕様になるなど、ほんの少し装いを新たにしてみなさまをお待ちしております。

そしてこの度、日本を拠点に100%ボタニカルダイのエプロンやバッグなどのライフグッズを手がける「Lefts,(レフツ)」とのコラボレーションが実現し、Blue Bottle Studio - Kyoto - と9月27日(水)*にアメリカ・ロサンゼルスにオープンするBlue Bottle Studio、公式オンラインストア限定で「ブルーボトル スタジオ トートバッグ」を発売する運びとなりました。このブルーボトル スタジオ トートバッグの生地は、Blue Bottle Studio - Kyoto - でトレーニングを行う際に出たコーヒーの抽出殻で染めており、Lefts,のユニークな形状のトートバッグをベースに、短いハンドルと長いショルダーストラップがついた2通りの使い方ができる、ブルーボトルコーヒー オリジナルデザインとなっております。落ち着いた色合いやシンプルさが日々のシーンに溶け込み、心地良い手触りと使い心地で長くご愛用いただけるアイテムです。

*現地時間

今回、ブルーボトル スタジオ トートバッグを一緒に製作していただいたLefts,の道田有妃さまに、Lefts,のブランドについてやブルーボトル スタジオ トートバッグの製作についてお話を伺いました。 

- 今回はブルーボトル スタジオ トートバッグをご一緒に製作いただいてありがとうございました!このバッグのユニークな形と 100% ボタニカルダイで製作するというコンセプトを気に入った ブルーボトルコーヒー創業者のジェームス が、Blue Bottle Studioのためのプロダクトとしてラインアップさせていただきたいというところから始まったコラボレーションですが、ブルーボトルからお声がけをさせていただいた時はどんな印象でしたか? 

シンプルに嬉しかったです(笑) 私自身、コーヒーがとても好きでブラックコーヒーを好んで飲んでいます。ブルーボトルは日本1号店をに、当時はまだニッチなポジションにあった清澄白河というロケーションを選んだことが興味深くて、オープン直後に訪れたのですが、あまりの長蛇の列に入店を諦めたという。それが記憶にあり、なかなかお店には入れずにいたのですが(笑)その後、地元の中目黒にカフェがオープンしたので、ようやく訪れたのが最初のブルーボトルの体験です。コールドブリューを飲んだらとてもおいしくて。次の日もコールドブリューを飲んだのですが、前日とまったく同じ味で。あたり前のことですが、飲食の業態においておいしいことってとても大事だと思っていて、しかもそれが(コールドブリューではないけれど)ブルーボトルの場合は人がハンドドリップするのに、きちんと安定しておいしい、というのが素晴らしく、強く印象に残りました。
何かやる時は、理由のあることや「それって面白いね」と言っていただけるようなことをしたいと考えていて、今回コラボレーションのお話をいただいて内容を聞いた時、それが実現できると思い、お受けしました。

- ありがとうございます!改めて、Lefts,というブランドについてお聞きしたいのですが、ブランド名は「余った」や「残った」という意味がある Leftoversからとっているんですよね?

そうなんです。Leftoversだと直球すぎるのと、我々が目指すべきは何事もオーバーさせないプロジェクトだと思って、間を取りLefts,としました。始まりは友人が、”SUNSHINE JUICE”という日本初のコールドプレスジュース専門店をオープンした際に、ジュースを搾った時に出る大量の搾りかすの活用方法を相談されたことです。これがきっかけでLefts,というプロジェクトをスタートしました。コールドプレスジュースは植物の水分だけを取り出すため、350mlのジュースを作るのに2〜3kgの野菜や果物が必要なんですね。そこで出た搾りかすを「ボタニカルダイ」という自然由来の色素で染める染色技術に使うことにしました。
あとは、美しい花もいずれは枯れてしまうし、食べ物も食せば無くなっていくものでその儚さに感動することもありますが、一方でその美しさを残していけないかなとも考えていて。それを留めて生活の中に植物がをさせるということを実現できたらとても素敵なんじゃないかと思っていたのもあってLefts,を始めました。

- Lefts,のプロダクトはハッとするような眩しいカラーのものも多いですよね。ボタニカルダイの魅力はどういったところにあるのでしょうか?

ボタニカルダイは安定性が高く、日常で使うのにふさわしい品質なことがいちばんの魅力です。ボタニカルダイは、簡単に言うと繊維にたんぱく質成分を吸着させて、吸着したたんぱく質に色素を入れていきます。たんぱく質が糊のような役割をするんですね。そのため、色落ちが起きないので日常で使いやすい製品です。自然なものやナチュラルなものってやわらかい色味で表現されることが多いと思うのですが、実際の自然の中にはハッとするような色の植物や虫も多いですよね。それを表現したいので、あえて鮮やかな色味を出しています。でも、Lefts,のプロダクトは異なるカラーを並べてみても、ネオン街のような雑然とした印象や違和感は感じられないかと思います。それは、自然の中にさまざまな色があっても違和感がないのと同じなんです。Lefts,のプロダクトは自然由来のカラーを採用しているからなんですね。さらに、自然界の色は1色に見えても色素の粒自体がいろいろな大きさで構成されているため、奥行きも感じられるかと思います。ボタニカルダイというと、サステナブルなライフスタイルを好まれる方から注目されることが多いですが、その色自体にこうした魅力があるので、“そうではないにも可愛いと思って手に取ってもらえると嬉しいです。

- 確かに、ビビットなカラーでも見ていてむしろ癒されるような気持ちになるのは、自然由来のカラーだからなのですね。今回作っていただいたブルーボトル スタジオ トートバッグもコーヒーの抽出殻で染めていただいていて、落ち着く色味ですよね。このトートバッグのユニークな形は何かからインスピレーションを得ているのでしょうか?

もともとは、私の友人でパリを拠点にケータリングサービスを提供するフーディストカンパニー”Rose Kitchen”を主宰する友人のRose Chalalai が、コロナの禍中にフードデリバリーサービスを始めた時に使っていた5段のお弁当箱用に作ったキャリーバッグでした。彼女の名前の”Rose”にちなんでバラで染めました。何も入れていない状態だと下に向かってすぼまっている形なのですが、側面にマチをつけていて、そのお弁当箱を入れると真っ直ぐな形になるようにデザインしています。

Roseさんの5段お弁当箱

- お弁当箱用だったのですね!今回、ブルーボトルコーヒー特注で長いショルダーをつけてショルダーバッグとしても使えるようにしていただいていますが、こだわった点や道田さんのお気に入りのポイントはどこでしょうか?

生地と形にこだわりました!20年後も”へたれながらも普通に”使えるものを作りたいと思っていて。買ったばかりの時こそはパリっとしている生地でも、みるみるへたれていってしまうと、がっかりしてしまいますよね。でも最初からくたっとしていて、気づいたらもう何年も使っているなあ、というものが理想でずっと愛せるなと思っていて。基本的にLefts,ではリネン(麻)の生地をつかっていて、トートバッグとして必要充分な強度ギリギリ、なるべく肉の薄いものというのにこだわり、使えば使うほどとろみと光沢が出る、という点も重要でした。あとは、残反(布製品が作られるときに出る端切れ)がなるべく出ないようなパターンメイキングにもこだわっています。もともとはランチボックスを入れるバッグでしたが、今回はトートバッグとしてお使いいただくため、ショルダーもつけて、男性の方でも快適に使えるように長めに作っています。特に気に入っているところは、ショルダーを縫い付けている位置です。肩からかけた時に円柱の形が綺麗に出るように作りました。

- 細かいところまでこだわっていただいているんですね。どのような工程で作っていただいているのでしょうか?

Lefts,では通常、「製品染め」という、生地を縫製して形にしてから染色しているのですが、今回は色が先に決まっていたため、生地が反物の状態で染色しました。試作の段階で3種類のサンプルを作って、半年以上かけて完成しました。Blue Bottle Studio  - Kyoto - のトレーニング時に出たコーヒーの抽出殻を譲り受け、それが持つ色素を抽出してカラーパレットをつくるのですが、コーヒーには多くの油分が含まれておりこれがpH調に影響を及ぼしてしまいます。そのためまずは、数週にわたりコーヒーの抽出殻の洗浄と天日干しを繰り返し、油分を全て取り除く必要があります。そして一つの原料でアルカリ性と酸性の値をチューニングすると、いくつも色を出すことができます。ブルーボトルさんと色味について検討を重ねた上で最終的なカラーを決定し、縫製へと移りました。

コーヒーの抽出殻から色素を抽出したカラーパレット

- とても丁寧に作っていただいているのが嬉しいです!早く多くの方に手に取ってもらいたいですね。最後に、道田さまが思う、これからのファッションにおけるサステナビリティや、挑戦していきたいことがあれば教えてください。

少なくとも、何を質問されても答えられること。つまり、「ゼロから100」、すべての工程において把握もしくは介入していくことが活動を持続させる上で大事だと思っています。そもそも”サステナブル”なビジネスとは、健全にプロフィットとベネフィットを継続して生み出すこと。それを実現させるには、今後は「ゼロから100」を全て自分たちで手がけて正当な価格で評価していただくことがファッションにおけるサステナビリティの必要条件だと私は考えます。しかし、そういう意味では現在は”ゼロ”の部分である”麻”という原料を自分で作れていなくて。日本は衣類を作る原料のうち天然繊維の中の植物性のもの、主に綿と麻は自給率が限りなく0%であるのが現状です。そこで2年前に、10年以内に私たちのエプロンを本当の意味で100%メイドインジャパンにすると決心して、FLUX(フラックス)という種類の、リネンの原料となる麻を畑で育て始めました。また近いうちに、このフラックスを繊維にするための”紡績”という工程も日本国内で復刻させるための中期プランをまさにいま計画中です。人の生活に寄り添うリネンプロダクトが、世界情勢や外部要因に引き込まれることなく100%国産でできる世の中を実現したいと考えています。

 

道田 有妃

情報をエディットする雑誌のライターや編集者として東京にてキャリアをスタート。経営学を学んだのち、ファッション業界でリテールビジネスのマーケティング、主にVMDとして活躍。その後スポーツファッションカンパニーにて、ブランドビルディングの経験を積む。10年以上の実績をもとに株式会社マーチングバンドを設立。ラグジュアリからカルチャー、そして飲食や映画、空間を縦横無尽に駆け回り、ブランドビルディングのコンサルタントを行ない、複数のファッションブランドを生み出してきた。Lefts,はこの過程で必然の出会いをもとに立ち上げられたライフスタイルグッズブランド。2015年にスタートしたサステイナブルでミーニングフルなプロダクトは昨今ようやく一般認知が広がってきた。また2019年には東京・神田にBar Moonshineをオープン。その後、moonshine cultural boutiqueとしてリニューアルし、2023年のビルの建て替えにて閉店するまで東京のセンターでカルチャーを発信し続けた。現在はリネン製品を原料から製品化まですべての工程を国内で実現することを目標に、福島県いわき市の仲間とともに農業分野にも挑戦中。

ぜひ、Lefts,のインスタグラムホームページもご覧ください。

 

いかがでしたでしょうか。Lefts,さまとブルーボトルの想いがコラボレートして誕生したブルーボトル スタジオ トートバッグは10月1日(日)より、発売開始です。みなさまが長く愛せる人生のアイテムの一つになれば嬉しいです。

Photo by Yusuke Oishi

 

Blue Bottle Studio - Kyoto -                             ⁠
住所:京都府京都市左京区南禅寺草川町 64 京都カフェ はなれ 2階⁠
⁠アクセス:地下鉄東西線「蹴上」駅から徒歩約 7 分⁠
⁠営業日:10月1日(日)から12月11日(月)までの毎週 金・土・日・月、および祝日⁠

⁠ご予約枠 :10:00~11:30/ 13:00~14:30/ 15:30~17:00⁠
*約 90 分のコースとなります。⁠
⁠席数:カウンター 4 席⁠
最大 4 名さまの予約が可能です。⁠

ご予約について:ご予約はこちらより承っております。
キャンセルは前日の 18:00 まで承ります。⁠
空き枠がある際は当日のご予約も承ります。お電話 ( 075-746-4453 ) にてご確認ください。⁠
メールアドレス:kyototoyaku@bluebottlecoffee.com⁠