Colombia: The First Single-Origin Coffee

みなさま、現在ブルーボトルコーヒー カフェやオンラインストアにてご提供しているコロンビア・ポパヤン・スプリングハーベストはもうお楽しみいただけましたでしょうか?こちらのコーヒーは豊かなチョコレートと黒糖の香りを持ち、またそれだけではない複雑なハーブの香りとフルーティーな酸味をお楽しみいただくことができます。

コロンビアのコーヒーは、このような信頼性の高い一貫性と、ニュアンスと複雑さを持つ素晴らしい品質を持ち合わせています。本日のブログでは、そのコロンビアのコーヒー生産に関する、伝統と実験にまつわるストーリーをご紹介させていただきます。

アンデス山脈の標高が高く、赤道直下の気候に恵まれたコロンビアは、スペシャルティコーヒーに使用されるアラビカ種コーヒー豆の栽培に適しています。現在、コロンビアはブラジル、ベトナムに次ぐ世界第3位のコーヒー生産国です。ロブスタ種を大量に栽培しているブラジルやベトナムとは異なり、コロンビアはこれまで複雑さと自然の甘みを持つアラビカ種のみを栽培しています。コロンビアの多くの地域では、1年に2度の収穫期があるため、常に新鮮なコーヒー豆を出荷することができます。ブルーボトルでは、現地のCaravelaやAzaharなどの優れた輸出パートナーの協力を得て、ヘイズバレーエスプレッソやコールドブリューに使用する高品質でトレーサビリティーのあるオーガニックコーヒー豆を、年間を通して購入しています。また生産者から送られてくるすべての袋をロット別に管理することで、シングルオリジンとして提供する特別なロットを選別することができます。


「ノスタルジア」を感じるコロンビアコーヒー

コロンビアのコーヒー豆は、1950年代にコーヒーの味として一般的にマーケティングされたために定着した、心地の良い「クラッシックな」コーヒーの味として知られています。私たちがコロンビアコーヒーを好む理由の一つは、ノスタルジック、つまり昔から親しまれてきた味を思わせることもありますが、カフェで提供するコーヒー豆には、それだけではない複雑さも必要であると考えています。

「コロンビアのコーヒー豆を選ぶ際には、バニラやブラウンシュガー、カカオの香りと、新鮮なりんごやアップルサイダーのような酸味を求めます」と語るのは、コロンビアを訪れたブルーボトルのグリーンコーヒーチームのコロンビア担当コーヒーバイヤー、ペレ・アヴォー。「コロンビアのコーヒーは重すぎない、濃厚でどっしりとしたボディを持っている傾向があります。」

スペシャルティロースターの中には、コロンビアを他の産地に比べて刺激的でないと感じる方もいるかもしれませんが、私たちはそうは思いません。「コロンビアのコーヒー豆の生産方法は、長い年月をかけて磨かれてきたものです。私たちはその一貫性に魅力を感じています。さらに、コロンビアでは新しい実験がトレンドとなっており、それに関して少し論争も巻き起こっています。」

コロンビアにおけるコーヒーの歴史

1700年代に、イエズス会の司祭がコロンビアにコーヒー豆をもたらしたと考えられています。1800年代には、輸出するのに十分なコーヒー生産に成長し、1835年には初めて米国に出荷されました。1927年には、生産者たちが非営利団体Federación Nacional de Cafeteros de Colombia (FNC)を設立しました。今日では、組織は50万人以上のメンバーが参加し、コロンビアのコーヒー経済に大きな力を持っています。組織は、創立時から政策がコーヒー生産者の立場を考えたものになるように活動を行い、そしてコーヒーの品質を向上させるための研究を行なっています。その結果コロンビア産コーヒー豆を、国際的に推進することに成功しました。

フアン・バルデスの登場

1958 年、FNCはコロンビア産コーヒー豆を世界初のシングルオリジンとして位置づけるための一連のマーケティングキャンペーンを開始しました。架空のコーヒー農家、フアン・バルデスと「世界で最も豊かなコーヒー」というキャッチフレーズを掲げた広告では、コロンビア産コーヒー豆が、広く普及していた特定の原産地を持たない大量市場のコーヒー豆に代わる、高品質なコーヒー豆として描かれています。

このコマーシャルは瞬く間に活字やテレビの定番となり、数十年の間にコーヒー愛好家のトレンドを反映して進化していきました。1970年代には、時代の 「大地に還る」という考え方を意識したのか、山の冷涼な空気の中でコーヒーチェリーを手摘みで収穫し、丁寧にウォッシュド加工した後に天日干しする姿が映し出されました。1980年代には、フアン・バルデスは高級スーパーマーケットに姿を現し、アメリカの裕福層に自分が正しいコーヒー豆を買っているということを保証しました。1990年代には、コーヒーのセカンドウェーブが到来し、装飾的なコーヒードリンクが流行する中、フアンは、シンプルで洗練された代替としてコロンビアのコーヒーを売り出してコマーシャルに現れました。

フアン・バルデスのその先へ

ある意味、フアン・バルデスキャンペーンはあまりにも成功しすぎたと言えます。今日でも、多くの人々がコロンビアのコーヒーは一つの味であると考えています。実際には、コロンビア産コーヒー豆は信じられないほどの多様性を持っています。

まず、コロンビアでは多様なアラビカ種が栽培されています。多くの生産国が2種類(ティピカとブルボン)のみ栽培しているのに対し、コロンビアにはカトゥーラ、マラゴジッペ、タビ、カスティージョ、そしてコロンビア、その他にも様々な品種が存在します。次に、国の比類のないテロワールです。5 つの主要なコーヒー栽培ゾーンが、アンデス山脈に沿う19の異なる地域に渡ります。山脈地帯では太陽光、土壌、湿度レベルが山の側面によって異なるため、それぞれの側面により栽培されるコーヒー豆の味が異なります。場所によっては、また、太平洋、カリブ海、またはアマゾン川、他の水源の影響を受けます。これらすべての要因により、信じられないほどの数のマイクロクライメートを見つけることができます。

最後に、コロンビアの優秀なコーヒー農家は、プロセス加工のエキスパートでもあります。2015年までは、FNCは完全にウォッシュド加工されていないコーヒー豆を輸出することを認めていませんでした。その理由と、またコーヒー豆を移動させるのに困難な地形という理由もあり、小規模農家の間では自分たちで丁寧にコーヒー豆を加工するという習慣が生まれました。(世界の他の生産地域では、小規模農家がフレッシュなコーヒーチェリーをウォッシングステーションに持って行き、そこでコーヒーチェリーは施設が購入し、プロセス加工をすることが一般的です) 


伝統 VS 実験

コロンビアではFNCの規則が緩和されたことで、一部の生産者はウォッシュド以外の加工方法を模索しています。このような新たな取り組みは、一部の伝統派の気がかりとなっています。また、多くの加工方法はウォッシュドプロセスに比べてコントロールが難しいことで知られているため、実験の結果、多くのコーヒー豆を台無しになることもあります。しかし、実験が成功した際には、大きな関心を生み出しています。

「コロンビアはコーヒー愛好家の聖地です」 と、アヴォーは言います。「人々はトレンドと聞くと、動揺します。」ブルーボトルでは一時的なトレンドをすぐに取り入れることはありませんが、産地がずっと同じ状態であるべき、とは考えていません。コロンビアの生産者が成し遂げた成功を、すべて祝福したいと思います。