Acidity in Coffee - コーヒーの「酸味」について -

本日は、コーヒーのテイストを考える中で、最も重要な要素の1つでありながら、最も誤解されやすくもある「酸味」についてお話ししたいと思います。ブルーボトルでは、コーヒーの香り、甘み、コク、苦みなど様々な要素を音として考え、そのハーモニーがコーヒーのテイストと考えたときに、酸味は上のオクターブを奏でていると考えたり、また暗い夜に輝く明るい光と考えることがよくあります。

コーヒーの酸味は、ある程度そのコーヒー固有のものですが、コーヒー豆の焙煎方法や抽出方法によって感じ方が変わることもあります。それについても、これからお話しさせていただきます。

コーヒーの酸味は良いもの?悪いもの?

コーヒーの「酸味」と聞いて、苦手と感じるゲストも少なからずいらっしゃいます。 「コーヒーの酸味に関する大きな問題の1つは、言葉そのものだと思います」と、ブルーボトルのアジアにおけるシニアクオリティ&イノベーションマネージャーであるケビン サクストンは言います。 「『酸味』という言葉は美味しいものや、好んで手にとるもののようには聞こえません。」

私たちがコーヒーを味わうとき、私たちはしばしば「明るい」「フルーティ」「爽やか」「ジューシー」などの言葉を使って、その心地よい酸味を表現します。また、口当たりだけでなく、特定のフレーバーを引用して酸味についても説明します。このコーヒーは、青リンゴやチェリータルトのあまずっぱさ思い出させますか?口をすぼめたくなるような酸味でしょうか?

酸味はコーヒーのフレーバー要素の1つですので、それ自体は良いものでも悪いものでもありません。ブルーボトルでは、酸味がそのコーヒーの中でどのような役割を果たしているかに注目して考えます。コーヒーのボディや甘さなどの味わいとのバランスが取れているのでしょうか、それとも不快な酸味でしょうか、コーヒーの味が一面的なものに感じるほどに酸味が少ないのでしょうか?

もちろん、個人的な好みにより味の捉え方は変わります。 「私にとっておいしいと感じるものも、あなたにとっては好みでないかもしれません」と、ラーニング&デベロップメント プログラムマネージャーのペレ・オヴォーは話します。 「さらに、あなたの気分も大きく影響します。 私自身も、常にフルーティで、酸味の強いコーヒーを飲みたいと感じるわけではありません。 時々、より甘みがありまろやかなテイストのコーヒーを飲みたくなることもあります。」

コーヒーのテロワールは酸味にどのように影響するか

ワインの世界では、人々は「テロワール」という言葉を用いて、ブドウがどこで育ち、それが最終的なワインにどのように影響するかについて説明することがあります。 この概念は、コーヒーチェリーと呼ばれるフルーツの種子であるコーヒー豆にも当てはまります。 

育つ環境に応じて、コーヒーは自然に一定レベルの酸味を持ちます。 適切な量の酸味はコーヒーのテイストに心地よいレイヤーを与えます。 コーヒーの種類、気候、標高、精製方法も、コーヒーの酸味の量に影響を与える可能性があります。 たとえば、高所で栽培されたコーヒーは、気温が低く酸素が少ないため、熟成速度が遅くなります。その結果、複雑なフレーバー、より高い酸性度、より高いレベルの糖が含まれるコーヒーになります。

たとえばブラジルで栽培されたコーヒーは、標高の低い場所で栽培されることが多く、チョコレートの香りとまろやかな酸味があり、コクがあり豊かであることが期待されます。 標高の高い場所で栽培されているケニア産のコーヒーは、多くの場合軽やかで華やかさがあり、ライムやグレープフルーツを感じるような酸味を持ちます。

ワインのように、コーヒーは濃くほろ苦いフレーバーから、明るいフルーティーで複雑なフレーバーまで、非常に幅広いフレーバーを表現することができ、その範囲は無限の探求につながるかもしれません。


焙煎がコーヒーの酸味にどのように影響するか

焙煎も酸味のレベルに影響します。 焙煎はそのコーヒーがもともと持っている酸味を高めることはありませんが、より長く焙煎することで、感じられる酸味を風味を減らし味をフラットにする可能性があります。 これは、サワードウのスライスをトーストするのと似ています。長くトーストし焼き目が濃くなるほど、自然な酸味は香ばしさの影に隠されていきます。 

「(同じ豆でも)低温でより長く焙煎することで、酸味を和らげハイトーンの味を少なくすると、より丸みを帯びたテイストのコーヒーとして感じることができます」とケビンは言います。 「高温で長時間焙煎すると、よりチョコレートフレーバーを感じるようになり、かなりの酸味を抑えることができます。」

たとえば、ブルーボトルの定番ブレンドであるヘイズバレー・エスプレッソ、ジャイアント・ステップス、ベラ・ドノヴァンなどのクラシックなブレンドは、シロップのようなしっかりとしたボディを持ち酸味は低めです。 これらのコーヒーは、キャラメリゼした砂糖のような甘みのあるフレーバーの引き出すために、より長い時間をかけて焙煎されます。

一方で単一産地から収穫されたシングルオリジンコーヒー、特により高いレベルの酸味を持つ東アフリカのコーヒーは、これらのコーヒーが持つフレーバーを引き立てる方法で焙煎をしています。 「焙煎する時間が短すぎると、コーヒーは酸っぱく、青みがあり、風味が完全に引き出されていない可能性があります」とケビンは言います。 「逆に時間をかけすぎると、アクセントとなる酸味がぼやけてしまう可能性があります。ある一定のタイミングで、適切な温度で焙煎することができると、そのコーヒーの持つ可能性が最大限に発揮され、フルーティーで複雑なフレーバーや、心地よい酸味、味の広がりを感じることができます」

コーヒーを淹れるとき、酸味はどのように変化するのでしょう?

コーヒーの抽出時には、適切な方法で抽出することで酸味を全体のテイストの一部として味わうことができます。コーヒーが抽出不足の場合、これはコーヒーの量に対してお湯を使いすぎたり、お湯の温度が低かったり、またはコーヒー豆の挽き目が細かすぎたことによりお湯が粉の粒子の間を通り抜ける時間が短くなりすぎた場合に発生する可能性があります。この場合、テイストのバランスが取れていない酸味を感じることになります。

「抽出時のコーヒーの溶解性について考えるとき、コーヒーからまずお湯に溶け出すのは、塩味や酸味のフレーバーです」とペレは言います。抽出不足の場合、コーヒーの自然な甘さは豆の中に閉じ込められたままとなってしまいます。

では、それがコーヒーが本来持つ酸味なのか、抽出不足により感じられる酸味なのかはどうすればわかるのでしょうか。

「私にとって、心地よいコーヒーの酸味と抽出不足のコーヒーの酸味は、その感じ方が異なります」と、クリエイティブプロジェクトコーディネーターのマリアナ マンデルバウムは言います。 「コーヒーが抽出不足で酸っぱいときは、サワーキャンディを口にした時のように、舌と頬の側面を引っ張られるような感覚になりますが、バランスが取れていると、酸味がフレーバーのハーモニーの中でキラリと輝くように感じられるのです。」

コーヒーを味わうときに、どんな種類の酸を感じることができるでしょう?

コーヒーに含まれる酸にはさまざまな種類がありますが、最も簡単に特定できるのは、私たちがすでに知っている食品と共通している成分です。

「例えば、青リンゴをかじった時のようなシャープな酸味をコーヒーに感じた場合、それはリンゴ酸である可能性があります。コーラのように、舌にはじけるような酸味を感じる場合、それはおそらくリン酸といえます。そしてクエン酸は、まさにレモンのような酸味を持っています」とマリアナは言います。

コーヒーに含まれる酸の種類を知る必要は必ずしもありませんが、それらの種類のフレーバーを特定できると、お気に入りのコーヒーを見つけるのに役立ちます。

酸味の少ないコーヒーが好きな場合はどうすればよいですか?

言うまでもなく、酸味はもちろん温度、甘さ、辛さ、苦味などの感覚は、人それぞれの味覚が異なり、私たち全員が異なる感じ方をしています。そして私たちが年をとるにつれて、それらの感覚も変化していきます。

カフェでコーヒーを飲まれる場合は、ためらうことなくバリスタにおすすめを聞いてみてください。バリスタはメニューを深く理解し、あなたにぴったりなコーヒーを見つけだすためにガイドをすることできます。

店舗やオンラインでコーヒーを購入する場合、知っておくべき一般的な点がいくつかあります。「酸味の少ないコーヒーを探している場合は、浅煎りのものよりも、中程度から深めの焙煎レベルのコーヒーを選ぶと安全です」とケビン氏は言います。また、ブラジル、メキシコ、またはスマトラからのコーヒーは、酸味が少なく、コクがありフルボディになる傾向があります。

チョコレートよりもフルーティーなテイスト、でも酸味が強すぎないコーヒーを試してみたい場合は、ナチュラルプロセスで精製されたコーヒーをお試しください。こちらの精製方法では、コーヒー豆となる種子の周りにフルーツを残したまま実を乾燥させます。(精製方法によるより詳しい違いについては、ぜひこちらの記事をご覧ください)

「(ナチュラルプロセスで精製されたコーヒーは)フルーティーなワインのような風味で知られていますが、これらのコーヒーは自然な甘味をしっかりと感じることができるので、酸味はシャープではなくまろやかです」とケビンは言います。

ご自身が一番お好きなコーヒーのスタイルを知るために、ブレンドとシングルオリジンそれぞれのフレーバーを一度に楽しめるお得な4種飲み比べセット「飲み比べセット」から始められてみるのはいかがでしょうか。おすすめのブレンド二種とシングルオリジン二種をそれぞれ100gずつお届けするこちらのセットでは、異なる豆を飲み比べていただいたり、その日の気分に合わせてお好きなコーヒーをお楽しみいただくことができますよ。