Origin Spotlight: Myanmar
現在全国のブルーボトルコーヒーカフェ(新宿カフェでは1月下旬からご提供予定となります)で、エスプレッソとして提供されている「ミャンマー・チャウク クーピン ビレッジ・ナチュラル」。ミャンマーは、未だにスペシャルティコーヒーショップのメニューでも、稀にしか見かけない産地の一つですが、そのコーヒー豆はとてもユニークなフレーバーを持ち、一口目からその新しい感覚に驚かされます。まるで、ナチュラルプロセス加工を施したエチオピア産のコーヒー豆のようなフルーティさを持ちながら、スマトラ産コーヒー豆に見られる、重みのあるボディや、スパイスも味わえる、ミャンマー独自のユニークな味わいです。2016年からブルーボトルと取引のある、ミャンマーの生産者コミュニティのチャウク クーピン(Kyauk Ku Pyin)が生産した今年のコーヒー豆は、ブラックベリー、ダークチョコレート、ほのかなレモングラス、そしてしっかりとしたボディが特徴です。
長いコーヒー栽培の歴史を持ちながら、2016年になって、ようやくスペシャルティコーヒー業界で注目されるようになったミャンマーの、近年の飛躍に至るまでのインスピレーショナルなバックストーリーをご紹介したいと思います。
ミャンマーに最初にコーヒー豆が持ち込まれたのは、1885年。中国、ラオス、タイの国境近くのシャン州に、英国植民者である宣教師が、小さなコーヒー農園を設立したのが始まりです。それ以来、ミャンマーで生産されたコーヒー豆は、主に地元の市場や、非公式の経路を介して国境を越えて、中国、ラオス、タイで提供されていました。ミャンマーのコーヒー生産は、軍事独裁政権による数十年続いた政情不安と、世界で最も長く続いている内戦の影響で、長い間横ばい状態でした。
軍事政権が集結し、2011年にミャンマーの国境が世界に開かれ始めると、外国投資が国に注ぎ込まれました。 2014年、USAID(アメリカ合衆国国際開発庁)は、農村開発プロジェクトのバリューチェーンに投資を行い、非営利団体であるWinrock Internationalとの5年間の契約し、さらにこのプロジェクトでCoffee Quality Institute(コーヒー品質協会)と提携しました。プロジェクトの目標は、コーヒー豆の品質とサプライチェーンを改善して、輸出可能なより収益性の高い作物を作り、参加農村コミュニティの経済的安定性を高めることでした。村のコーヒー生産者たちは、農学、コーヒー加工、生産効率、品質管理、およびファイナンスや市場進出に関するトレーニングを、支援団体から受けました。
このプロジェクトは、参加を志願したシャン州の少数のコーヒー生産コミュニティから始まりました。コーヒー豆のプロセス処理は、水と設備の両方がほとんど必要ないという点で、小規模農家のコーヒー生産に適しているため、ナチュラルプロセス加工が採用されました。この地域の気候は乾燥していて、収穫期には雨が少なく涼しい夜があり、コーヒー豆の乾燥に最適です。小規模なプロセス加工実験においても、プロセス加工が適切に行われた場合、ナチュラルプロセス加工が施されたコーヒー豆の方がカップの品質が高くなる可能性があることが実証されました。
このプロジェクトが始まってから数年で、ミャンマーのコーヒー生産者は、低品質のコモディティコーヒーから高価値のスペシャルティコーヒーへ目覚ましい移行を成し遂げました。プロジェクトに参加しているコミュニティは、2016年に最初の輸出品である2コンテナ(36トン)のコーヒー豆を、米国ワシントン州シアトル市に出荷することができました。これは当初の目標の2倍です。品質の向上に成功することで、彼らはプロジェクト参加以前に販売していた価格の2〜4倍の価格でコーヒー豆を輸出することができ、コミュニティとってポジティブな影響を大きく与えました。彼らの努力によって品質が向上することは想定されていましたが、多くの農家が新しい手法を迅速に習得し、その結果、コーヒー豆の品質と風味がすべての人の期待を上回ったことに、プロジェクトメンバーは驚きました。
「私は、2019年に第5回全国コーヒーコンテストの審査員として招待され、初めてミャンマーを訪れました。さまざまな農場や生産者からエントリーされた、およそ70種類のコーヒーサンプルを4日かけて評価しましたが、ミャンマーが、他の人気のあるコーヒー生産国に匹敵するコーヒー豆を生産していることは明白でした」- ケビン(ブルーボトルコーヒージャパン クオリティコントロール マネージャー)
チャウク クーピン(Kyauk Ku Pyin)
チャウク クーピン(Kyauk Ku Pyin)は、ミャンマーのシャン州にある村の名前で、この投資プロジェクトに参加したコミュニティの一つであり、ブルーボトルにとって特別な存在です。私たちは、彼らのコーヒー豆を2017年に初めてのミャンマー産シングルオリジンコーヒーとしてリリースして以来、毎年提供しています。
チャウク クーピンは500世帯からなる小さな村で、お茶、オレンジ、アボカド、そしてコーヒー豆を主に生産しています。500世帯のうち150世帯がコーヒー豆を生産しており、それぞれ単一ではなく、コミュニティ全体で統括したものを販売しています。彼らはコーヒーチェリーをそのまま竹製の乾燥棚の上で自然乾燥させる、ナチュラルプロセス加工を採用しています。天日干しはおよそ16日間、天候によっては、それより長い期間かかる場合があります。その期間中は、チェリーを均等に乾燥させるために、乾燥棚に広がるコーヒーチェリーを1時間ごとに手で回転させます。それは、品質や一貫性に影響するとても重要なプロセスです。目標の水分レベルまで乾燥させると、コーヒー豆は袋に入れられて保管されます。輸出の直前に、乾燥した皮と果実を取り除き、種子、つまり輸出可能な生豆に精製されます。
「チャウク クーピンコミュニティのメンバーと話すとき、彼らが今まで何十年もコーヒー豆を生産していたにもかかわらず、2014年に始まったばかりのように彼らの農場について語っているのは、興味深いものでした。その年は、彼らにとって非常に劇的な変化があり、コーヒー豆の概念や価値が変わった年です。」 - ケビン
2021年初めのブルーボトルコーヒーブログはミャンマーのコーヒーについてお伝えさえていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
今回こちらのコーヒー豆はエスプレッソとしてご提供しておりますが、ケビンのおすすめの飲み方は「ジブラルタル」や「カプチーノ」だそうです。(「ジブラルタル」ってどんなドリンク?と思われた方はぜひこちらの記事をお読みください!)ブルーボトルコーヒーカフェでは、ラテ、カプチーノ、ジブラルタルなど、エスプレッソを多数ご用意しております。ドリンクにより使用するミルクの量や温度が異なり、味わいが異なりますので、気になられた方はぜひお気軽にバリスタにご相談ください!
※現在、オンラインストアでもお取り扱いがございます。
ミャンマー・チャウク クーピン ビレッジ・ナチュラル 商品ページ
「ミャンマー・チャウク クーピン ビレッジ・ナチュラル」コーヒー豆の詳細:
品種:カトゥアイ
標高:1360〜1400メートル
プロセス:ナチュラル
ナチュラルプロセス加工について:天候に応じて、収穫したコーヒーチェリーを、15〜35日間天日干しします。次に、乾燥した皮を取り除く作業(ハリング)を行います。ナチュラルプロセスを施すことで、果実の糖分とフレーバーはコーヒー豆に濃縮され、よりしっかりとしたボディ、抑えられた酸味、そしてフルーティーでワインのようなフレーバーに仕上がります。
ウォッシュドプロセス加工について:収穫したコーヒーチェリーの果肉をパルプマシンで取り除いた後、数時間から数日の間、コーヒー豆を水中で発酵させます。次に、コーヒー豆はすすがれ、屋外の乾燥棚、または乾燥機で乾燥されます。ウォッシュドプロセスが施されることで、明るく爽やか、クリーンで明瞭なフレーバーに仕上がります。