ONE KILN - ひとつの窯から始まる物語

ブルーボトルコーヒーでは、美味しいコーヒーやフードにはもちろん、それをお楽しみいただく空間にもこだわりを持ってご提供させていただいています。美味しさをじっくりお楽しみいただける”コーヒーに集中できるシンプルさ”と、地域の方に長く愛していただけるよう“カフェが位置する街やコミュニティに溶け込み寄り添うこと”を重要視したカフェデザイン。私たちが作るカフェはそれぞれにストーリーがあり、同じデザインのものはひとつもありません。

そしてカフェ店内で使用する器も、空間を彩る大切な要素の一つ。いくつかのカフェでは、そのカフェのコンセプトや体験に合わせた器をご用意し、ゲストに提供しています。

本日は、ブルーボトルコーヒー 渋谷カフェで使用させていただいている器を制作いただいている、「ONE KILN(ワンキルン)」さんをご紹介させていただければと思います。渋谷カフェは、アパレルショップが立ち並ぶ渋谷らしいエリアに位置ながら、緑に囲まれた多くの屋外席が開放感溢れる北谷公園内に位置し、ショッピングの合間のコーヒーブレイク、ワインとブランチプレートで屋外シートでゆっくりとブランチ、などゲストが思い思いにお楽しみいただけるデザインとなっています。カフェの中には、公園の一部であるという雰囲気を作るために、イタリア・エトナ山の火山灰から作られた温かみのある赤茶色のタイルを1階のカウンターと2階の壁に大きく使用しています。

鹿児島を拠点に2008年より活動される ワンキルンの城戸 雄介さんもまた、自ら地元の土を掘ってブレンドし、様々な鉱物や灰などを調合してオリジナルの色や質感を創出した器を作られています。城戸さんが作り出す明るく優しい器の色味は、公園の中にあるカフェで過ごすひとときの軽やかな気分を、より一層高めてくれます。

ワンキルン=一つの窯という意味を持つブランド名や、理念である「THE SUN TO A TABLE - 食卓に太陽を -」には、ひとつの窯に灯った小さな光が、だんだん太陽の日差しのように広がっていってほしいという願いと、テーブルを通して、人々の笑顔に寄り添うブランドになりたいという希望の意味が含まれています。

鹿児島市にある工房にて

渋谷カフェでは鹿児島県坊津(ぼうのつ)の柑橘類を有機栽培している棚田で採取されるやや粘土質の坊津土に天草陶石に混ぜて成形した「CULTIVATE(カルチベイト)」シリーズと、桜島の火山灰を釉薬に使った、ダイナミックな表情の「Ash(アッシュ)」シリーズを使用してフードをご提供しています。

Cultivate

「耕す」という意味があるカルチベイトシリーズは、地元の土の個性や土地の文化を真っ直ぐに伝えたいという思いから生まれたもの。実はブルーボトルとの出会いが、こちらのシリーズが生まれるきっかけの一つになったそう!

「以前アメリカ旅行をした際に、ふらりと立ち寄ったのがブルーボトルのカフェでした。素敵なカフェで、バリスタの方がハンドドリップで一杯ずつ丁寧に淹れる姿に、とても感動したのを覚えています。その時に、産地の個性を大切する「シングルオリジン」という定義を初めて知り、器も同じく土の個性を大切にしたい思ったことが、カルチベイトシリーズを作るきっかけにもなっています。」そう城戸さんは話します。(ちなみにコーヒーもお好きな城戸さんは、夏場はエチオピアやニカラグアなどの浅煎りのフルーティーなものを、冬場はコクある中煎りの豆を飲まれることが多いそう。)

陶器の魅力である土の表情やあたたかみを残しつつ、磁器の特徴である強度も兼ね備えたこちらのシリーズは、表面のカラーは釉薬の種類と焼成方法の違いで、同じ土から何種類もの色を生み出します。釉薬が掛けられていない裏面からは、坊津土のさらりとした感触が。表面にかかった艶やかな釉薬と対照的で、坊津土の質感を強く感じることができます。そして器の裏面には、どこで採れた土が使われているかわかるよう、産地の緯度経度、ブレンドした土の割合が刻印されています。


Ash 

鹿児島のシンボルである「桜島」が恵んでくれる火山灰を使用したこちらのアッシュ シリーズ。加える灰の量や、焼くときの温度など、何年もの試行錯誤の末に完成したシリーズは、黒く鉄の質感のように感じる磁器で、酸素の量や窯に入れて焼く量によって風合いが変わり、滲んだようなもの、散りばめられたようなものなど、豊かな表情が特徴です。光の当たり具合、長く使い続けることでマットな風合いになる経年変化を楽しめるのも魅力の一つです。

陶芸という伝統工芸的な側面も多く残る世界の中で、先人の方や周りの方からの知恵や助けに感謝を持ちながら、伝統的な風習や方法をただそのまま続けていくのではなく、違和感を感じたら立ち止まり、新たなアプローチで解決できるブランドでありたいと城戸さんは話します。よりシンプルな発想で、学んだことは周りにシェアし循環させながら、より良いものを作っていきたい。その削ぎ落とされた軽やかな姿勢は、コーヒーという素材にこだわり、コーヒーに集中できるシンプルな仕組みやデザインを追求するブルーボトルの、コーヒーに対する想いと共通するところを感じました。

ONE KILN x BLUE BOTTLE COFFEE 

その後、渋谷カフェでのお取り組みを通してブルーボトルが考えるコーヒー体験をご理解いただいていたこと、また城戸さんはプロダクトデザインと作陶がどちらも得意とされていらっしゃることから、2021年10月には両ブランドのコラボレーションコーヒーカップ「コーヒーカップ アジワイ」と「コーヒーカップ カオリ」という2種類のカップが発売となりました。同じコーヒーでも異なる体験がお楽しみいただけるオリジナルデザインのこちらのカップは、コーヒーの香りをよりお楽しみいただける「KAORI」と、コーヒーを口に含んだ際に、よりフレーバーを感じる事ができる「AJIWAI」の2種類をご用意しています。ワンキルンの代表的なシリーズであるカルチベイトシリーズと同じ坊津の土を使用し、釉薬を薄く抑えて、土本来の風合いを際立てています。

こちらのカップは、城戸さんのコーヒータイムでも、なくてはならないものになっているそう。「朝、子供達を送り出した後、妻と今一日の計画を話しながらコーヒーを飲みます。寒い時期には、中煎り豆をカフェオレにして飲むことが多いです。天気の良い日、縁側で飲むのも楽しみのひとつです。マグはもちろん「KAORI」と「AJIWAI」で。朝以外にも休憩時間、眠気覚しに、接客にと、1日3杯くらい飲むので、少量ずつ飲みきるのにちょうど良いサイズです。」

ワンキルンさんのストーリーは、いかがでしたでしょうか?器に込められた想いやストーリーを感じながら、コーヒーやメニューをお楽しみいただくと、より一層コーヒータイムが豊かになるかもしれませんね。次回カフェにお越しいただけた際には、ぜひ思い出していただけたら嬉しいです。

 

ONE KILN Official Website